
2019年5月24日からポリシー違反の通知やポリシーセンターでは特に何も問題が表示されないにも関わらず、AdSenseの広告が表示されない。または、広告がほとんど表示されないという現象について、AdSense ヘルプフォーラムに多数、投稿されています。この現象は日本だけではなく、全世界で発生しています。
英語のAdSense フォーラムに、エキスパートがどの程度の規模で発生しているのかを把握するために、通知などはなく、サイトで広告が表示さなくなった現象が発生しているユーザーに投稿を呼びかけたところ、非常に多くの投稿がありました。6月15日の時点で投稿は900近くあります。
日本での事例としては、以下のヘルプフォーラムのスレッドが代表的なものです。(それ以外にも同様の現象の投稿は少なからずあります。)
アドセンス広告が突然表示されなくなりました – AdSense ヘルプ コミュニティー(フォーラム)
広告が表示されない理由は様々であり、サイト固有の問題と思われる投稿も含まれていますが、多くは以下の様な共通点があります。
- AdSense パフォーマンスレポートでページビューは通常通り表示されるが、表示回数が極端に少ない、または0。
- 自動広告とマニュアル設置の広告両方共、表示されない。(自動広告のみで表示されないというわけではない。)
- ポリシー違反の警告や処分の通知などは受け取っていない。ポリシーセンター
- サイト単位ではなく、アカウント全体(一部のサイトではなく、運営するサイト全て)で広告が表示されない。
- CMSに依存していない(WordPress、Bloggerなど、特定のCMSに依存して発生しているわけではない)
目次 - Table of Contents
ポリシー違反はないと表示されているのに広告が表示されない理由
2019年5月24日以降多発している広告が表示されなくなった現象の特徴は、ポリシー違反の警告や停止処分通知などはなく、ポリシーセンターでもポリシー違反はないと表示されていることです。「ポリシー違反はないと表示されているのに広告が表示されないのは何故?」と思われるのは自然なことだと思います。
ポリシー違反はなくても広告配信は制限されることがあります
ポリシー違反によりアカウント停止処分となった場合には、運営するサイトでの広告配信が停止されます。停止処分となった場合には、通知も届きます。サイト単位での広告配信停止の場合は、ポリシーセンターなどでも違反確認することができます。
上記の様なポリシー違反の処分という形式でなくても、AdSenseのシステム側で広告配信を制限することはあります。システムによる広告配信制限の場合は、通知などは送信されません。
2019年5月後半にAdSense ヘルプページの無効なトラフィックの定義の説明に以下の様な記述が追加されました。
Google 広告のクリックはユーザーの純粋な興味のもとで行われる必要があり、AdSense プログラム ポリシーでは、クリック数やインプレッション数を作為的に増やすいかなる行為も固く禁止されています。サイト運営者のアカウントで無効なトラフィックが多数検出された場合、広告主とユーザーを保護するために、アカウントを停止または無効化させていただく場合があります。サイト運営者のトラフィックの品質を確認できない場合は、広告の配信を制限または停止することがあります。
トラフィックの品質による広告配信制限強化の導入
2019年5月24日以降多発している、ポリシー違反の通知がなく、広告配信が止まった、または広告がほとんど表示されない現象が発生しているアカウントで、AdSense サポートに問い合わせを行ったところ、以下の様な返答を受け取ったという事例が多数あります。
Google is constantly investing in measures to protect and improve the experience for advertisers, publishers, and users of AdSense.
As we have been unable to verify the quality of your traffic, your ad serving is currently being limited. Your sites or apps may experience less demand from Google while we continue to evaluate your traffic quality.
Googleは、広告主、サイト運営者、AdSenseのユーザーのエクスペリエンスを保護し改善するための対策に随時、投資を行っています。
我々は、トラフィックの品質を確認することができなかったため、現在、(あなたのサイト・アカウント・ページなどへの)広告配信が制限されています。 Googleがトラフィックの品質を引き続き評価している間、あなたのサイトまたはアプリで、Googleからの要求(Google からの広告配信、表示)が少なくなる場合があります。
冒頭で紹介した英語のAdSense フォーラムのスレッドでは、Googleの社員さんが上記AdSenseサポートの返答文(定型文)を踏襲した上で以下の様な文を加えています。
As we launch improvements to our systems and defenses, sites with invalid traffic may experience limited ad-serving. Additionally, if we are unable to verify the quality of your traffic, we may limit or disable your ad serving.
我々はシステムの改善と防御の導入を行ったため、無効トラフィックのあるサイトは、広告配信が制限される可能性があります。追加として、我々がトラフィックの品質を確認できなかった場合には、広告配信を制限、または無効にする場合があります。
トラフィックの品質による広告配信の制限などを強化するシステムアップデートを行ったことを示唆しています。
無効なトラフィックに関連するAdSense ヘルプページの説明の大幅増強
今回のトラフィックの品質による広告配信制限をシステムに導入する1週間前頃にAdSenseヘルプページに、無効なトラフィックについての説明記事が更新されました。無効なトラフィックについての定義、Googleの取り組み、防止についてなどの記述がこれまでと比べて、ページ数と内容が大幅に増強されました。記載されている内容も、更に踏み込んだ具体的な説明となっています。
- 無効なトラフィックの定義
- 無効なトラフィックを排除するための Google の取り組み
- 無効なトラフィックを防止する方法
- アカウントを適正に運営する
- 妨害行為の概要と対策
- 広告のクリックを IP でブロックする
- 自分の広告をテストする
本件に該当する問い合わせに対するAdSense サポートからの返答には上のAdSenseヘルプページを参照することを推奨する文が含まれています。
トラフィックの品質による広告配信制限が発生している場合の特徴
広告が表示されない理由は様々です。原因・理由を絞り込んでいき、対処するステップを踏みます。トラフィックの品質による広告配信制限を受けていることに該当するかを確認します。
ページビューは通常通りカウントされているが表示回数が極めて少ない
問題となっていると思われる原因の切り分けとしての大きなポイントは、AdSenseのレポートでページビューは通常通りカウントされているかどうかです。ページビュー数は通常通り、表示されているということは、広告コードが機能動作していることを示しています。
ページビューに対して、広告表示回数が著しく少ない、または0となっている場合は、広告配信が制限されている可能性が高いです。
広告が表示されない場合のトラブルシューティング – AdSense ヘルプ
サイト単位ではなく、アカウント単位で広告配信が制限される
2019年5月24日以降に多発している事例は、サイト単位ではなく、アカウント単位で発生しているのが特徴です。複数のサイトを運営していて、運営するサイト全てで広告がほとんど表示されない場合は、トラフィックの品質の問題でアカウントの広告配信が制限されていることに該当すると思われます。
AdSense 運用期間の短いアカウントで発生しやすい
英語のフォーラムでは、多数のユーザーがサイトのURLなどを開示しています。AdSenseの運用期間が比較的短いアカウントの投稿が多いです
AdSenseの運用期間が短い場合は、実績が少ないため、トラフィックの品質を確認することが難しいです。そのため、トラフィックの品質が確認できないために制限が行われやすい傾向があると推測しています。新規ユーザーで、AdSense審査の承認後、直ぐに広告配信が止まったという事例もあります。
Google AdSense 広告配信仕様変更について
今回のトラフィックの品質による広告配信制限についての事例の投稿は、WebmasterWorldには殆ど見られません。一方、AdSenseヘルプフォーラムには多数の投稿があります。このことからも、本件に該当するのは運営期間の短いサイト運営者である傾向があることを示しています。
広告配信制限の期間は?
トラフィックの品質による広告配信制限を受けた場合の対処法
トラフィックの品質の確認が行われ、品質に問題がないと判断されれば、広告配信は再開されます。主な対処法の選択肢を紹介します。
何もせずに再配信されるのを待つ
特に何もしなくても、トラフィックの品質が確認されれば、広告が再配信される可能性はあります。トラフィックの品質について問題はないと考えるのであれば、何もしないで待つのも選択肢としてあります。
しかし、トラフィックの品質を自分で調査したり、できる範囲で改善を行うことは、再配信される可能性を高めたり、再び配信制限が発生する可能性を低減することに繋がるため、できることはしておくことをお勧め致します。
トラフィックの品質について
トラフィックの品質というのは、ユーザーがサイトを訪問する目的、動機などとの関連性があります。
サイト運営者本人、または関係者、第三者がサイトの収益を得ることを目的に広告をクリックすることはポリシーで禁じられています。誤ってクリックしてしまうこともありますが、意図的にクリックすることは厳禁です。Googleが、明らかに意図的なクリック(無効クリック)であると判定した場合には、アカウント停止や無効処分を行うこともあります。しかし、意図的であると断定できない場合には、処分は下さないものの、トラフィックの品質を確認する配信制限を行う可能性があります。そのため、極力、誤クリックをしないように努める必要があります。
検索を経由してサイトを訪問するユーザーは、何らかの情報を探していたり、興味のある事柄について知りたい、調べたいと思っていることが多いです。検索経由で訪問を行ったユーザーは、サイト内に掲載されている広告が探している情報や興味のある事柄に関連している場合もあります。広告主から見た場合には、その様な興味を持ってくれるユーザーの目に留まるサイトに広告を掲載したいと考えます。一般的に検索経由のトラフィックは(広告収益の観点でも)品質が高くなります。
ソーシャル・ネットワークなどのトラフィックや広告を含むキャンペーンを使用したサイトへの訪問のトラフィックは品質が低くなりがちです。理由は、サイトへの訪問の動機が、サイトに記載されている内容への興味でない場合も少なくないためです。
日本語のサイトで、海外からの訪問比率が多い場合には、スパムなどが含まれている可能性が高くなります。サイトの内容に興味があるのではなく、その他の目的でサイトを訪問している可能性が高いです。
トラフィックの分析
過去のAdSenseのパフォーマンスレポートの指標を見て、ページビューに対するクリック数の比率(ページCTR)の履歴を確認します。ページCTRは、サイトや訪問者層によって異なりますが、ある程度以上の訪問者がいるサイトの場合は、それほど大きな変動はないのが通常です。
訪問者が少ないサイトの場合は、CTRの上下変動も大きくなります。分母(ページビュー数)は、最低1000程度の単位でないとクリック率の変動は大きくなります。
ある程度以上の訪問者数があるサイトのページCTRは、一般的には1%あればかなり高いほうです。数%というのは非常に高いです。基本的にユーザーはサイトに興味を持って訪問するので、広告をクリックするユーザーは多くありません。目安としては数十人に一人クリックする程度です。
ページCTRが高いということは、広告に興味を持っているのではなく、クリックをしている人の割合が高くなる傾向があります。ページCTRが高い場合は、Google アナリティクスのレポートで広告をクリックしているユーザーが特定の地域や端末に偏っていないかなどを確認します。
Googleアナリティクスで、「集客」から「概要」をクリックすると、集客サマリーが表示されます。サイト訪問の元となるチェネルの比率を見ることである程度のトラフィックの品質の目安を確認することができます。検索の比率が高ければ高いほど、トラフィックの品質は高くなる可能性が高いです。大まかな目安としては、検索の比率が8割以上であれば、トラフィックの品質は問題ない可能性が高くなります。5割を切る場合には、かなり注意が必要です。
また、訪問者のルート(チャネル)だけではなく、ユーザーの平均セッション時間、直帰率、ページ/セッションなども重要です。セッション時間が短かったり、直帰率が高い場合には、ユーザーがサイトにあまり興味を持たなかったことを間接的に示しています。
トラフィックの品質を高める方法
誤クリックの防止
「広告と記事のテキストや他の要素との間隔を十分に空ける。」、「広告の上にラベル(スポンサーリンク、または広告)を表示させる」などの対策が、誤クリック防止の基本です。
記事内の広告は、クリック率が高めになる傾向があります。誤クリックの発生率も高いです。広告配信制限を受けた場合には、記事内の広告は一旦、削除することをお勧め致します。
AdSenseのシステムは非常に高度なため、嫌がらせ目的でのクリックはある程度以上の確度で判別が可能と思われます。そのため、過度の心配は必要ありません。一方、Googleには分からないだろうと思って、安易な気持ちでクリックすることの方が広告配信制限などを受けるリスクが非常に高いです。度が過ぎた場合には、アカウント停止、または無効処分となります。
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