
2015年10月、BloombergのインタビューでRankBrainについてのQ&Aが報道され、SEO業界内で大きな話題となりました。ランクブレインに関しては、ネット上にも情報があるのですが、基本的な内容はこのインタビューでの話が元だと思います。ランクブレインに関するSEOメディアによる記事(英語)は、情報ソースが明確でないような話、推測に基づくようなもの、解釈が異なるものも見受けられます。
Bloomberg インタビューでのGoogleの説明を以下に紹介します。
RankBrainとは?
Q: ランクブレインとは何ですか?
ランクブレインは、Google検索結果ページを表示するアルゴリズムに使用される数百のシグナルの1つです。ランクブレイン以外の全てのシグナルは、Googleのエンジニアが様々な検証等を行った上で作成したプログラムアルゴリズムによるものです。対してランクブレインは、ラーニングシステムです。実際のところアーティフィシャルインテリジェンスの様に言語を理解したり、クエリを理解したりするというようなものではないのですが、人の感じたことや想像などについて推測を行うものです。
Q: 実際の利用について教えて下さい。どの様に検索に利用されて、検索が効率化されたり効果的になるのでしょうか?
Googleに不明瞭なクエリで検索をしたり、カラオケの歌詞などを入れたり、人に話すようなことなどを質問したりすると、伝統的にコンピュータは、見たことの無いフレーズや理解できない言葉があると、対応不能となります。ランクブレインは、クエリを一般化して、似たような過去に使われたフレーズと同様の意味で使われているのではないかと推測したりして、解釈しようとします。混雑しているバーの中で、相手が話している内容が全てが聞こえているわけではなくても、話していること内容について推測理解して、人が会話することができることと似ています。
Q: 現在、どの程度の割合でGoogleの検索はランクブレインを使用しているのですか?
毎秒数百万の検索が行われる中の非常に多くの部分で使用されています。数百ある中で三番目に最も重要なシグナルとなっています。
Q: 今後さらに展開を広げていくのですか? Googleにとってどのような重要性と可能性を持っているのですか?
ランクブレインは既に世界中で使用されています。数百人のエンジニアがAIのためのアドバンスドR&Dプロジェクト(最先端の研究開発プロジェクト)に取り組んでいます。ランクブレインの研究開発で、導入しようとしている言葉を理解しようとするテクノロジーは、将来コンピューターが自分で考えて論理的な思考をしたり、基本的なパズルの解析を行うことに繋がる一端となる可能性を秘めています。
AI vs マシーンラーニング(機械学習)
AI(Artificial Intelligence)は、日本語では人工知能のことです。定義にもよりますが、基本的には人間と同様に言葉を理解したり、考えたりできることを意味します。(真の意味で)言葉を理解したり、考えたりできるコンピュータシステムが実現するのはまだかなり先のことだと考えられています。現時点では、AIは研究開発の段階です。(AIの定義によります。)
マシーンラーニング(機械学習)というのは、学習機能を持つシステム(プログラム)です。学習機能を持つコンピュータシステムは既に様々なものがあります。身近なところでは、ワードプロセッサーが、表示頻度が高い順番に変換候補を並べ替えたりすることも学習機能によるものです。極めて高度な学習機能を持つシステムも実用化されています。
今回紹介したブルームバーグのインタビューでも、Googleの方は開口一番にランクブレインは本物のアーティフィシャルインテリジェンスではないと断っています。技術的には、ランクブレインも高度なマシーンラーニングを備えたシステムと言えます。
一方で、AIと言う言葉はSF映画、ドラマ、小説、漫画などでも使われ、良く知られている一般に馴染みやすい言葉です。マシーンラーニングよりも語呂も良く、一般に通じやすい言葉であることから、AIと言う言葉が使われることも多いです。GoogleのAI ファーストもその一例です。マシーンラーニング・ファーストでは長すぎますし、イメージしづらいです。
2017年のGoogle I/O のキーノートスピーチでCEO Sundar Pichai氏は、「Google モバイルファーストからAIファーストへ」の全社的な取り組みを発表しました。キーノートスピーチの中でも、Pichai氏はAIよりマシーンラーニングと言う言葉を多く使用しています。
実際のところ、技術者、または技術に精通する人からするとAIとマシーンラーニングの違いは(定義にもよりますが)大きいです。ただ、AIと言う言葉は、本当に普及しているので、技術者でもAIとあえて使う場合も今は少くありません。だからと言って、マシーンラーニングと言う言葉が廃れることはまずないと思います。(実際には、マシーンラーニングです。)
以下は、ランクブレインの開発に携わったGoogleのシニアリサーチサイエンティスト Greg Corradoさんのインタビューです。この中でもCorradoさんは、マシーンラーニングと言う言葉を使っています。(AIという言葉は多分彼の口からは一度も出ていないと思います。)
ランクブレインについての感想と考察
冒頭で紹介したブルームバーグのインビューでのランクブレインについての説明はとても分かり易いと思います。ランクブレインの存在が明らかになってから、約2年経過しました。この間に、さらに高度化していることは明らかです。過去に一度も検索されたことのない検索クエリで検索が行われることは意外と多いようです。(2007年にGoogleが明らかにした内容の中で、検索クエリの内、25%は一度も検索されたことがないとのデータが含まれています。2013年の時点では15%程度と言う説があります。)
検索クエリの中でランクブレインが使用される比率はかなり高いとブルームバーグのインタビューでも明言しています。さらには、200以上ある検索ランキングシグナルの内、ランクブレインは、最も重要な3番目であると語っていることから、本当に重要なシグナルであることが分かります。
ランクブレインは、検索クエリから、検索を行ったユーザーが具体的に何を探しているのか、どの様な情報を求めているのかと言うようなことを推測するようなことも行っている可能性もあります。
音声による検索の比率も増えています。音声による検索クエリは、タイプするものとは異なる場合も多いと思います。音声による検索の増加によって、検索クエリもさらに多様化し、ランクブレインが取り持つ役割も同様に高まる可能性もあります。(既にそうなっている可能性もあります。)
ブルームバーグのインタビューでは、マシーンラーニングによるシグナルは、ランクブレインが初めてと言うことでしたが、ランクブレインの機能拡張やマシーンラーニングを活用した新たなランキングシグナルが加わっている可能性も考えられます。
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